くもった眼鏡 十首
くもった眼鏡 グレイビーボートが食卓からはなれ昼寝するわが頭上をとおる キリストはわれに休日与え給う七十五まで働ける世に 布ぐつで水たまり避ける足どりはフラミンゴからもっとも遠い 紫陽花が赤く咲きおり桜木の下には死体が睡るというが 鼻で食うものかもしれぬ灼熱の麻婆豆腐に対峙しており 麻婆豆腐はじめにつくりし陳麻婆美人という説すこし信じる 「石の家」「味王」歌人は中華好き歌会あとの二次会が好き 背景は雨で眼鏡がくもってて令和二年のわれはほほえむ? 梅雨よりも雨季というべし日本が泥に戻ってしまうほど降る 唐突に晴れればビニール傘たちはあるじを失い墓場へ行くも