砂山
坂のぼり坂おりてゆき湖《うみ》にいく山を崩してベッドタウンあり
髪の毛がぼうぼうになるようにきて庭木が茂るかつての豪邸
ことさらにゆっくり停まる西武バス記憶と記憶を巡りゆきおり
地中から土器を剥がして並べいる郷土資料館に時計はあらず
「おくさま」の服のままなる嫗いて向かい三軒両隣掃く
山の神トトロがいないと知りしのち痩せゆく八国山の背中は
さらさらと春の柳瀬川ながれおり孔子は川に無常みつけし
のぞまれる朝なのかしれず一斉に動き始める車両基地なり
山の土すなわち山をもちて来しミキサー車けむり吐いてさりたり
わが湯呑かつて山から削られし土からふたたび立ちあげられた