コインパーキングは光っている 山田航歌集『水に沈む羊』を読みつつ

 ここ最近、私の地元では少しばかり再開発がみられる。しかし、人口推計では減少傾向となっている。企業の誘致やタワーマンションの建設は人口減少を食い止めるか、おそらくちょっとしたブレーキになる程度だろう。市街区以外は空き家や、無人のマンションがあり徐々にそして確実に過疎化が進んでいる。

  この駐車場で踊らう坊さんが墓地を潰して拡げた場所で 山田航『水に沈む羊』

 超高齢化社会の次は多死社会が来るらしい。火葬場が足りなくなるとかいわれているが、お墓が足りなくなるとはあまりいわれない。おそらく永代供養が増えるのだろう。そう考えると引用歌は多死社会のちょっと先の時代感がある。しかし、駐車場はこれから先増えるのだろうかなどとも思って読む。

  日系のヴォーカルが歌ふリンキンパーク 民族はつねに、つねに失語と 同

 辺野古の埋め立てや、日本の良さを前面に押し出したテレビ番組を見ていて、そろそろ日本のアイデンティティは崩壊するのではないかなどと思うことがある。リンキンパークのボーカル……チェスター・ベニントンもマーク・ウェイクフィールドでもなくてマイク・シノダか。私が大学生のとき洋楽を聴いていたときはチェスター・ベニントンはまだ生きていた。カラオケでかっこよくNumbを歌っていた韓国人の留学生を思い出すなどしていろいろ感慨深い。マイク・シノダはWikipediaをみるとかなりチャーミングな人物だが、日系人についてのアイデンティティについては葛藤をみせつつ、アイデンティティを確立するエピソードが記載されている。きっと民族についてはマイク・シノダより山田のほうが悲観的だが、これは私も共感できる。私なぞは海外旅行もしたことがない日本にしがみついている人種なので、日本と運命をともにしているといっても過言ではないのだ。
 そんなことを考えながら散歩をすると楽しいのか、悲しいのかわからなくなってくる。また、経済を肌で感じるような23区内に勤めたらそんな感傷も生じないのかもしれない。しかし、ここは郊外だ。そして私の地元だ。未来よりも過去のほうが多く散り積もっている。そして、今日もコインパーキングの看板が黄色く光っている。