2022年10月の日記

 2022/10/1

 生業の会合。酒宴は久しぶりでただでさえ下戸だが輪をかけて弱くなっている。ランチはフカヒレチャーハンと点心と中華粥だった。あと海老を蒸したものは美味。映画『翔んで埼玉』をみる。他県のひとは見てて面白いのだろうか。


2022/10/2

 評論を書き上げる。昨日の疲れもしっかりとれた。ブログの記事も書き上げる。


2022/10/8

 週末日記のような様相。酒井健著『バタイユ 魅惑する 思想』を読み始める。バタイユの著作について年代などにはとらわれず酒井がいい感じに抄出して解説する本。序論で回遊式庭園といっていたがいい得て妙かもしれない。

 明日は地元の祭。行かないが山車が出ていたので彫刻などを観察する。龍と、中世の武将。武将は地域がら新田義貞と足利尊氏とかかな。

 昼は山田うどんで赤パンチ定食。辛いのは年齢的に卒業かもしれない。


2022/10/9

 ぶんぶくといううどん屋に行く。地区が違うので気になっていたけどいかなかった店で、三十年まえくらいから気になっていた。正面には瑞岩寺という寺があり法事も意識してか店構えはいい。天ぷらとせいろに乗ったうどんが出てくる。うどんも笹、細麺、太麺の三種類があり、大盛りにすると三種類同時に楽しめる。さて、所沢のうどん屋は地区ごとにあり、先のように法事と関係しているように思う。人が集まるときに馳走としてうどんを出していた地域なので、法事にうどんを食べる習慣があったとて不思議ではない。日本にはキリスト教式の教区はないが、うどん屋ごとのうどん区が所沢にはあるのではないか。そう考えるとうどんが神々しく思えてくる。


2022/10/10

 奥野克巳ら編著『モア・ザン・ヒューマン マルチスピーシーズ人類学と環境人文学』読了。文学は環境批評、哲学は環境哲学、環境政治学や環境経済学もある。環境人文学は広い概念だが、別の潮流でマルチスピーシーズ人類学がある。人類学を人類以外の視点から、もしくは接地面から捉える潮流である。進化学や進化心理学からもアクセスできそうな視点である。面白い本なのでブログでレビューしたい。岩波「思想」でも特集されていたしマルチスピーシーズ人類学はいま熱いと思う。

 さて、あまのやといううどん屋に行きたかったが閉まっている。月曜だからか。あまのやは地区が違うので、昨日のぶんぶくのように遠征になる。涼太郎も遠征といえば遠征なのだが、駅前店というカテゴリーなので所沢駅ユーザーの共有財だと思う。

 評論を送った。載るといいな。


2022/10/15

 朝、アナウンサーがスプーンで蜂蜜を満面の笑みで舐めていた。一匹の蜜蜂は一生かけてようやくスプーン一杯分の蜜蜂を集めるという。そんな貴重なものを美味しいですねと笑顔で舐められる様子をみて、人間的に何かが欠けているのだろうと思った。消費する限りはどうしても理不尽な搾取が生じる。無自覚に生きるのは搾取する/される社会の固定化に貢献しているということである。

 奥野克巳著『絡まりあう生命』を読んでいる。これもマルチスピーシーズの本。人文学という地平から自然を眺めるのが何か新鮮だ。文理を越境する新奇さがある。インドネシアのプナン族の生活や価値観が面白く、鳥が人間の狩猟を察知しヒゲイノシシやテナガザルに知らせるなどなど、バルガス・リョサにもそんな小説があった。読み終わったらまた評論を書こう。休んでいる暇はない。自分の文学的な未熟さが呪わしい。泥臭く読んで書くしかないのだが、頭痛で進まなかった。評論も畳み掛けるように書かなくては。

 ドトールコーヒーは一人男性客としては入りやすいカフェだ。昔はもっとタバコ臭くて空いていたが、分煙化が進み混む店になった。そのせいか最近、時間札なるものを注文時に渡されるようになった。席が九十分制だが、札は二時間ごとに色が分かれている。九十分といいつつ二時間過ぎたら店員から声をかけられるかもしれないというものだ。読書に九十分はちょうどいい。それ以上の時間を読むなら自室でじっくり読みたい。客席を見回すとオレンジ、青と番号札が混在している。スーツの男は青で、老夫婦はオレンジ、私もオレンジ。スーツの男は少し長居しているようだ。入店時刻が見える化すると、店内の客に時間軸が現れて四次元空間にいるような気分になる。自分と同じオレンジの札の老夫婦は同じ時間軸にいて触れることができる。一方でスーツの男は青い札なので目には見えるがそれは時間の残恣で触れることはできない、そんな気になる。そのうち私もスーツの男同様に実態がなくなるかもしれない。残っているのはブログの記事のみ。



2022/10/16

 川根茶をいただく。大井川流域に茶畑があり霧深い風土である。その霧が味をよくするポイントらしい。色は黄色で香りはふっと抜けていく。旨味や甘味、苦味は舌に残り余韻がある。

 なかのゼロの隣に紅葉山公園がある。渓谷状の庭で小さいながら見ごたえがある。楓がたくさん植えられている。なかのゼロではロンネフェルトのアイリッシュモルトがある。好きな紅茶。

 かりんの歌会。クレタ島のミノタウロスまわりの話と、魔女の話をした。短歌ブームや歌集、賞、語られると語られるほど薄っぺらになっていく気がする。文学は何なのか、文化とは、それに与するということは、真剣に考えなければならない。


2022/10/17

 今日は早めに仕事をあがる。映画『コードネームU.N.C.L.E』というスパイアクションを観る。1960年代、ナチスの残党が影にある核爆弾をめぐり、CIAとKGBの凄腕スパイが組むといういい感じでベタな作品。冷戦感満載だが対照的に両スパイの友情が熱い。逆にこの熱さが今の排他的な世界情勢に慣れてしまった肌にしみる。こういう映画を全世界で笑ってみられる時代がくるといいんだよな。


2022/10/21

 弟の命日。よりによって仕事が多く残業してしまった。20時過ぎでもタクシーで真っ暗ななか墓参する。


2022/10/22

 大学院の説明会。大学院に行って文学を本格的に学ぼうかと思ったりしている。が、行って伸びるのかどうか。ビックカメラでネット環境の増強を検討。

 奥野克巳ら編著『モア・ザン・ヒューマン マルチスピーシーズ人類学と環境人文学』を再読。

 夕げのもつ煮込みが美味しかった。


2022/10/23

 あまのやといううどん屋にいく。細めの麺でつけ汁に鷹の爪が入っているのが特徴的。どじょうやうなぎなどサイドメニューも充実しており、昼飲みにもいい場所であろう雰囲気。

 今枝由郎訳『スッタニパータ ブッダの言葉』読了。原始経典は明治以降に日本に入ってきたらしい。それまでは大乗仏教の経典のみで仏教は成り立っていたらしいが、かつての僧侶たちは原始仏教とか気にならなかったのだろうか。さて、訳も分かりやすいし論語を読んだときに思ったが、聖人の言行録は布教や説教がベースなので非常に分かりやすい。冒頭は過去未来、生死その他執着を蛇の脱け殻のように脱ぎされと説いている。解脱の元かもしれない。そのつぎに他人との交わりや、執着に惑わされることなく犀の角のように独り歩めと説く。愛欲などの煩悩はもちろんのこと、出家者は妻帯や飲酒も戒めている。愛着だけ憂いが生まれることからである。道に生きるもの、バラモン、通暁者、龍、目の開いた者など呼び名はたくさんあるが、執着から解き放たれ、感覚器官を統制し、三宝を敬うものはある境地に至るという。見方によってはニヒリズムだが、日本人は仏教の価値観がインストールされているので感覚的にもブッダの言葉がわかる気がする。


2022/10/25

 スッタニパータ、生活者としての自分を揺さぶってくる。投資などで生業に縛られないfireという風潮が流行っているが、fireは彼岸のような存在にみえる。悲願にして彼岸。


2022/10/26

 岡井隆著『詩歌の岸辺で 新しい詩を読むために』読了。詩歌をめぐるエッセイ集。こんな感じで古今東西の詩歌を読むのは楽しい。趣味、詩歌を読むのいい在り方な気がする。

 そういえば職場で日本の末を悲観したようなことを口走ったが、文芸や文化はまだ活かしようがあると思う。発信者・享受者の弱体化はあるが。


2022/10/27

  機動戦士ガンダム水星の魔女が面白い。早くもっと汚い大人と、イケオジが出てくればいいのに。こういうキャラは二部に出てくるんだよなぁ。


2022/10/29

 昼はうどん屋涼太郎で肉汁うどん。美味。


2022/10/30

 小泉苳三『近代短歌の性格』読了。苳三が近代短歌論の基礎という印象があるし、いや実際そうだろう。白鳥正宗的な存在だと思う。正岡子規、与謝野鉄幹、斎藤茂吉や北原白秋の扱いや、和歌革新運動のあたりは後続の論が苳三を踏襲しているのか、うんうんと首肯する内容。所々に茂吉の性欲が云々とか、松村英一は表層的など本音が垣間見れた。十月会派生の結社って微妙に特色があるのだ。現在は地上、剄草はあまり活動が見えないが、埋もれてしまって勿体ない歌人がいそうだ。

 加藤典洋『テキストから遠く離れて』を読み始める。短歌もテキスト読み破りなジャンルだな。

 昼は寿司屋。ここにきて寿司屋の遊び方がようやくわかってきた。いままで食べてきた寿司、つまり日本人の一般大衆が認識している寿司と全く異なる次元に寿司屋の寿司がある。まだ今日は一部の寿司観を更新したに過ぎない。しばらく通う必要がありそうだ。

 〈音あらぬ機と機ともつれてまさやかに飛びゐる空は戸山が原か 窪田空穂『明暗』〉。日常に戦争があることを感じさせる歌。こういう景色は映画のなかだけだと思っていたが、最近報道でよく観るようになってしまった。飛行機のドッグファイトはないが、小さな飛行機の形をしたドローンは目では追え、しかし対処しようがないほどに標的へ飛んでいき爆発する。

 今月?来月はかりん誌の前月号鑑賞だ。今日はちょっと引用歌を選んだ。明日明後日で書き上げたい。