柿生の風景

  馬場・岩田両先生の歌の風景で柿生は欠かせない。私は毎回といっていいほど、訪れるときは花束を持っている。駅から「柿生坂」に向かうときに、麻生川を渡る。岩田先生の歌に出てくる鴨には毎回会えない。数十分待ったり、川沿いを少し歩いてみたりして探してもいいのだが、みんな楽しそうに歩みを進めていく。ふと、自分はかつて、集団から置いていかれる子だったことを思い出す。置いていかれるくらいのほうが楽しく生きられたのかもしれない。柿生坂は結構急である。小高く丘陵になっており、木々も鬱蒼としているので、まだ野生動物が多く生息していそうだ。以前はコノハズクも生息していたという。今は猪のような獣害のほうが時事的で、「猪は絶対いるよね」とみんなと話す。もし出てきたら歌にしたい。

 下りの柿生坂はいつも真っ暗である。お腹も膨れ、軽くお酒に酔い、いい気分だ。みんな影だけになってしまうが、声は楽しそう。「おぱんちゅうさぎ」、「猫ミーム」、いわゆる若者文化に私も疎くなってしまった。有馬記念やM―1は馴染みがなかったが、意外にも楽しめた。当然ながら夜の麻生川には鴨はいない。今回も会えずじまい。車の音、電車の音が遠くで聞こえる。この時間が永遠に続けばいいのに。

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