ひつじの乗り物
仕事場のUSBの奥の奥「閻魔帳」というファイルがねむる
太りたる鼠(の死体)のかたちしたマウスを今日も強く叩きぬ
即席麺カツ丼の味が残りたるわが血が誰かに輸血さるらん
かつて牛だったおもかげトラックはやさしい顔して黒煙を吐く
半分がマスクに覆われ群衆が来訪神のように見えくる
水槽のネオンテトラの食べ方を十通り思いめぐらせていた
熱湯が紅茶に染まりゆくところ「考える人」の顔でながめる
ゆりかごと介護ベッドに柵はあり内と外とを分かちておりぬ
〈七曲り通り〉を歩くこのうねり「ゆとり教育」「リーマンショック」
山林はひとを呑みこむものである踏み込みすぎたから家朽ちる
〈プロパティ〉ひらけばわが名が書かれあるエクセルファイルが古巣で泣いた
危ないから揺れないひつじの乗り物が地面に半分埋まっておりぬ