肩こりの具合(十五首)

  肩こりの具合

議事録を黙々とちぎり築きたる一座の山に息吹きかける

ヘアピンが当直部屋におちている眠れず月を見あげる人の

満月のかたちの錠剤かばんから出す人と話すスーパームーンを

民謡の「一週間」の早さもてTO・DOリストを消化しており

線路内の石塊のごと男いてスマートフォンで啄木を読む

下井草から鷺ノ宮まで乗り過ごす白鷺に会えるかもしれぬから

肩こりの具合を君は気にかける深夜のメールが続く週末

青きバラ表紙に咲いた小説を君に貸し出す期限さだめず

君は騎手われは遅馬 繋ぐ手で操られいる右へ左へ

薬局にマスクがならぶ笑顔でも悲しき顔でも見せてはならず

さしあたり肘と膝かなさみどりの中に躑躅がぽつぽつと咲む

簡潔に相談記録を残したり男の花瓶の椿の落つを

ぜんざいを目当てに二人で通いたる茶店にホルスト「惑星」流る

アキレスが亀に追いつくことできぬもどかしさかな青竹を踏む

振り向けばアキレスなどはいなかった一匹で歩く亀なり日本

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