かりん一首鑑賞2020年4月

  サピエンス幼かりけり虹なども虫のたぐいとかんがえし頃 東山研司「かりん」2020年4月号

 虹という題の連作に収録されている歌から引用した。東山は理知的な歌を多く詠んでいる。引用歌は虹を虫のたぐいと考えたことについて、幼いといいつつも作者自身もそれを発見したという複雑な構造になっている。作者は広大な虹をみたときに漢字に虫偏があることに気づき、それは大きなワームか、もしくは細かい色とりどりの虫が集まって成り立ってるのかなど連想していったのだろう。そして、古の人はそのようなことを考えて漢字を作ったのかもしれないと思い巡らせるのだ。二句目の幼かりけりは、幼いというと稚拙という意味も帯びてくるが、作者が連想した虹の成り立ちの寓話的な素朴さに共感したと読むこともできる。そう読むと古代ロマンも感じる歌である。短歌が表記文学になってだいぶ歴史があるが、引用歌のような文字のつくりから展開する歌は、口承文学おいては成り立たない歌である。もし口頭で聞いてもかなり難しい謎解きになってしまう。そんなことも考えながら読んだ。