砂山 十首

  砂山

坂のぼり坂おりてゆき湖《うみ》にいく山を崩してベッドタウンあり

髪の毛がぼうぼうになるようにきて庭木が茂るかつての豪邸

ことさらにゆっくり停まる西武バス記憶と記憶を巡りゆきおり

地中から土器を剥がして並べいる郷土資料館に時計はあらず

「おくさま」の服のままなる嫗いて向かい三軒両隣掃く

山の神トトロがいないと知りしのち痩せゆく八国山の背中は

さらさらと春の柳瀬川ながれおり孔子は川に無常みつけし

のぞまれる朝なのかしれず一斉に動き始める車両基地なり

山の土すなわち山をもちて来しミキサー車けむり吐いてさりたり

わが湯呑かつて山から削られし土からふたたび立ちあげられた

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