ひょうたん島 十首

  ひょうたん島

わが思想をブックカバーは覆いたり矢絣という甘き柄にて

堅き髪ざくっざくっと刈られおり雑草だましいかつて流行りき

茶畑はわが頭髪に近くして夏にみどりが吹きあげるのだ

週末にアリナミンのめばまだ動く白物家電のような体躯よ

〈みなさんのお墨付き〉なる緑茶から広がる浅き苦みを飲みぬ

虫食いの穴もつ神社はにんげんに遠くカラスとおはなしをする

夜の雨がけやき並木を重くするわが部屋の外が沈みはじめる

ひょうたん島の終着点はない明日も明後日も上り下りの電車

炎天の直売所にてしおれゆく胡瓜を救い囓りてやらん

わが夢と夢のあいだに聞こえくる長距離トラック発車する音

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