高野豆腐 十首

  高野豆腐

つたの先追えば皿からはずれたりロイヤルコペンハーゲンの午後

色ガラスや透かしガラスがきらめいて浪漫を飲ませる喫茶店あり

「短歌より散文」という一節がドスのようだな平出修には

黒きひと香港でひとをさらうから『時代閉塞の現状』を読む

ジンバックのバッグは牡鹿三杯目飲んだらわたしのまわりを駆ける

ゆっくりとレモンをグラスに沈ませる吐いた毒ごと化石になれよ

花束を鼻腔に咲かせる種らしいホワイトペッパー奥歯で噛んだ

探偵はバーにはいない年金の話をしている男女が目立つ

金融の折れ線グラフにあらわれる雲があるらし比喩ではなくて

投げ出した高野豆腐の身体なりぷすぷすと生気漏れてやまずも

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