W 十首

  W

手のひらに生命線があることよ入り日に濃くなりそして消えたり

夕焼けに逆らうように青色のウィンドウズがこうこうと照る

うつむきで蕊長くある海棠を人差し指でもてあそびおり

帰ったらわれらは寝るよ傷ついた歩兵のような寝息をたてて

Wednesdayに槍もつ老神ひそみおりそれよりわれの目の下の隈

焼酎に沈む老人たからかに宇宙侵略説を唱える

むくのきとけやきが相抱くように立ち数百年の愛は愛かや

オーディンの槍の柄に吹くひこばえを摘み取ってきたようなけやきだ

手のひらのスピーカーから意外にも水晶のようなラ・カンパネラ鳴る

「新宿のいまです」ニュースにうつくしい夜景がうつる疫病の世の

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