巨人の足跡 十首

  巨人の足跡

西行と話した月と朔太郎愛した月とわが上の月

かつて馬なりしタクシー炎天を黒き身に浴びふるえておりぬ

馬ならば弔われるも壊れたる自動車積みあげられて首無し

ホイールを外してブレーキ付けるらし解説動画は箴言めいて

牛乳を買いに行くため燃やされる小さな生きものだったガソリン

朝なさな十人坂を登りたり和製ホラーのようなその名よ

西行のつぶやきが歌になるあいだ西行松は太りゆきけん

朝顔の大きな柵をとおりすぐどれだけ歩けば漂泊なるか

茄子のよくなりし畑が売られのち小さな巨人の足跡がある

むらさきの空のしたみな帰る人なぜかエンジン音もやさしい