習作集一・二 ほのお・外濠沿い 各五首

  ほのお

みどりごの大きさの鮫のぬいぐるみ買わんと思う牙やわらかき

怪気炎あげる背広の男いてこけしのわれを燃やそうとする

しゃべくりで猛き男を宥めいるわが背なに燃える怪しきほのお

たおやめの兎が狸をもてあそびごうごうぱちぱち狸は死んだ

冬の月とりわけ親し着ぶくれのわがししむらを清く凍らせ

  外濠沿い

コンクリの壁にびっしりビラありき法政大学五十五年館

明大より少し高いといわれける法政の塔はもう見つからず

外濠はおじいさんなれど学生のバカが泳いで春が来るなり

高校生のわれは確かに見たはずだバリケードありし学生会館

鉄門は太くか黒く閉ざされておおわが母校は都会めきゆく