習作集一・六 オクラカレー・らせん 十八首

   オクラカレー


みな死んだ地上の蝉は鉄板のアスファルトから命がかわく


プルートに死はなく地球に死はあって死の星でユーチューバーしゃべる


ゴキブリはフナムシひとの波は波プラットホームで目をつぶりみる


海のない埼玉県で目を閉じて海の幻想砂漠の幻想


オクラ浮くインドカレーにナンひたす朴浴のような手の動きして


インド人もバテる暑さの日本に辛さフツーのカレー食みおり


太陽を恋うもの死にきアポロンと隣の畑の高き向日葵


炎天のアスファルトにも蟻はいて蝉を土へと運びつづける


  らせん


ゼンマイのような音して蝉が落つ秋虫がなく螺旋なすなり


ごんごんとガラスに頭を打ちつける蝉はこの世に慣れずに死んだ


あわれな蝉よ今度は冬に来よ銀色をなす冬の陽がある


ひぇ蝉!と夜道で跳ねる花火なき二〇二〇年夏の絶叫


最寄り駅とわが家のあいだに落とし物ぼんやり光るわが足跡を


巨大なるドリルでがりがり進むのだ月より大きいグレンラガンは


月もまたらせんをゆっくり描きつつ進歩史観を示唆してきたか


たったひとつ隕石落ちれば滅ぶ星いっさいは些事明日は仕事だ


朝顔はパラボラアンテナ少年のまなこに夏を焼きつけている


バーバーのサインポールが上に上に上りつづけて衛星になる