猫と添い寝をしたい歌

  猫の緒にかかりし御簾のはざまよりほの見し人をねうとこそ思へ 源頼政「為忠家後度百首」

 久保田淳『「うたのことば」に耳をすます』によると、結句のねうが寝むと猫の鳴き声の擬音語ねうと掛かっており、猫の縁語でもあるという。『源氏物語』で柏木が女三宮の猫を愛で思いを馳せるという下敷きも解説されており、簾の奥にいる美しい人といるかもしれない猫のほのぼとのして華憐な感じが伝わってくる。
 猫画像や野良猫に癒やされる現代人筆者としては、美しい人と共寝したいというのは建前で頼政は猫と共寝したいという迷鑑賞をしたい。その強い猫への愛は武士としての照れがあり、美しい人を隠れ蓑にしたような気がする。そう信じたい、ツイッターで流れる猫のかわいい画像や動画を多くの人が愛でるように、引用歌で美しい人に擬態した猫を密かに愛でるそんな歌であったら癒やされる。