サイゼリヤについて

 三十路になってサイゼリヤがまた好きになっている。駅前に一軒あったがガヤガヤしており、敬遠していたが少し離れたところにもう一軒できたのがきっかけだ。相変わらず混んでいるが、面積があるのでガヤガヤ感が緩和されている。
 サイゼリヤは個人店のイタリアンほど凝っていない。しかし、メニューを読むとイタリアの食文化についての豆知識的なものもある。イタリア人が出てくるテレビでもサイゼリヤは本場の味だと激賞していたので、本場は日本のうどんのごとく大衆的な食べ物なのだろう。個人店のように繊細な味付けというよりは、トマトとチーズとベーコンでうま味を全面に押し出すリピート必至の鉄板食文化なのだ。
 とはいえ三十路のサイゼリヤは一筋縄ではいかない。高校生のときのようにミラノ風ドリア一択ではないのだ。何周かメニューに目を通し、自分の食指の動きを察知する。たとえば、ガーデンサラダ、ラム肉の串焼き、ボンゴレビアンコ(期間限定)、ティラミスのセルフコースメニューを設定する。少しシンプルだが、ガーデンサラダが多いためこれでお腹いっぱいになるだろうと推測する。万が一足りなかった場合はどうするか、ティラミスを頼む前に生ハムを挟んで本でも読みがら余韻に浸り、落ち着いたところでデザートにするなど二の手を用意する必要があるのだ。
 とにかくサイゼリヤは楽しい。大人サイゼリヤは豪遊できる。ランチで、筆者は下戸なので飲み物はイタリアンコーヒーとエスプレッソを飲むが、サイゼリヤにはワインの他に食前酒と食後酒もある。ローマ人になりきって昼間から酒池肉林に溺れるのもいいだろう。さて、下戸のローマ人は当時の酒池肉林でどう振る舞ったのだろう。おそらく甘味に溺れて成人病になったに違いない。