所沢うどん雑感

  筆者の住む所沢はうどんが名物だ。意外と知られていないがテレビ番組などで所沢の名物を挙げるときに稀にランクインする。島崎藤村『夜明け前』は木曽路だがそこでもうどんはふるまわれている。うどんは農村でハレのときにふるまうことや、ほうとうのように日常的に食べる国民食なのだ。

 さて、所沢うどんというからには他のうどんと差異がなくてはならない。所沢うどんは肉汁うどんで、麺が冷たく汁が熱い。いわゆるひやあつと呼ばれるものである。そして、漬け汁うどんになっているということも特徴的である。有名な讃岐うどんははなまるうどんや報道で見る限りではかけうどんや、ぶっかけうどんが主流のようであるが、所沢うどんは漬け汁うどんの形式をとるのである。

 東京都西部を含めて武蔵野うどんと呼ばれることがある。全国的には武蔵野うどんと呼ぶのが通常であろう。武蔵野うどんのなかで、所沢うどんの独自性があるとするならば、豚肉が多く入った漬け汁にある。小平市あたりまでいくと肉汁もあるが、糧盛りうどんが主流になってくる。糧はほうれん草やねぎ、大根が盛り付けられ、全体的に華やかになるだけではなく、味に変化をもたらすものでもある。小平一体は平地が多く農作物が安定して収穫できたということもあるのかもしれない。所沢うどんには糧はない。麺と肉汁があれば満足なのだ。その麺も量が尋常ではない(頼み方もできる)。男性客は六玉くらいは平気で平らげる。メニューには八玉もあるので好きな人は心ゆくまでうどんを吸い込むことができる。

 幸い所沢うどんを提供する店は所沢東西南北各所にあるため、所沢のその他の名所を探訪するついでに気軽に立ち寄ることができる。また、所沢を代表する飲食店山田うどんでも肉汁うどんを頼むことができる。コシの強い麺と、豚の旨味やくどすぎない脂をたたえた漬け汁に溺れる感覚を多くの人に味わってもらいたい。