塚田千束さんの発行する「アスパラ号外」は短歌四首と読書エッセイが収録されている。A4片面という頁設定が潔く、デザインが素敵だ。輪のようなデザインが金色のように見え、CMYKの色の組み合わせで出る色なのかと思う。
帰り道わすれてしまうパンくずも小石も鳥が飲み込んでしまう
森に入るときに、迷わないように小石やパン屑を来た道に撒き奥へと進むという童話があった記憶がある。何の話かは思い出せない。歌のとおり他の動物が食べてしまい困ってしまう場合と、功を奏する場合があるだろう。歌では鳥に妨害されてしまう。童話から出て来たような鳥なので可愛らしい鳥のようにも思えるが、小石を飲み込むという点でこの世のものではない鳥に思えてくる。怪鳥ともいうべきだろうか。童話らしさと、怪鳥らしさが混ざり、ややグロテスクになる点が却って寓話性を帯びるということなのかもしれない。
「今週の読書」は間宮改衣著『ここはすべての夜明けまえ』を取り上げる。「機械と融合手術を受け永遠に老いない25歳の主人公が、父や兄姉、甥のことをゆっくりとふりかえる手記。」とのことだ。サイボーグ009もそうだが、不老不死になるとやや表情や生き方に影が生まれる。限られた生命の作者が不老不死の存在を思うとき、屈託があるのは何故だろうか。不老不死かまではわからないが、メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』の中の怪物も苦しんでいた。塚田曰く「愛と孤独の話」とのことだ。ゆっくりと休みの日に読みたい小説。平日だと蝿のように生き急いでしまうから。
作品、「今週の読書」、デザイン全体として、秋の静かな雰囲気があるネットプリントであった。引用した歌も、『ここはすべての夜明けまえ』もあてどなさがある。たまたまなのか、その時の気分が共鳴したのか、筆者の気分を投影してそう思ってしまったのか。塚田は二〇二四年九月二十二日第九回文学フリマ札幌に出店するとのこと、筆者は残念ながらうかがえないが、本ネットプリントで予感を味わうことができた。