2026年の衆議院選挙でチームみらいが11議席獲得したことに時代を感じる。ITや先端技術に関心が高いことは肯定的に思うが、社会保障や社会福祉に弱い印象を受け、惜しく思っている。近代以降人類が勝ち取ってきた福祉国家という視点は善政に不可欠であるためだ。そこで、福祉行政の末端である筆者が、チームみらいのマニフェストを読んで思ったことを下記に記した。首肯する部分もあったが、記事が冗長になるので割愛し、クリティカルな不満点のみ記した。
なお、マニフェストの文章をボールド体・下線とし、丸地私見をベタ打ちとした。
【社会保障政策を読んで思ったこと】
1. 将来世代のために、複雑化した税・社会保障制度をシンプルでなめらかにします
・将来世代の信認が得られ、今後の不確実性にも耐えられる税制・社会保障制度を目指します。その際には、以下のようなシンプルでなめらかな制度設計を志向します:
(1) 社会保険は制度内で収入と支出を完結できる形を目指す。 基礎年金については税方式を志向する
社会保障全体のうち、年金は共助である社会保険に位置づけられていた。しかし、上記のように税方式で徴収し、年金給付することは公助である社会扶助の性質を帯びる。現在の年金制度と外見上は変わらないように見えるが、月と鼈といえる。社会保障法の外見上は、増税のうえ年金受給資格者に対してベーシックインカムを給付するということになるのではないか。また、税金という形で徴収した場合、歳入となり、現在のようにGPIFで運用することは難しくなるのではないか。そもそもそうした、可塑性を期待し、年金制度は特殊法人である日本年金機構が管理し、賦課方式積み立て方式を取ったのではないか。マニフェストではシンプルな制度設計を目指すというが、法律は体系であり、シンプルになりえない要素があるのではないか。
【医療政策を読んで思ったこと】
政策概要
・高額医療費制度の上限の拙速な引き上げを見直します
・中長期的には、診療行為のエビデンス、費用対効果や重症度に基づく自己負担割合の複数段階化を検討します。
・現在の健康保険法や高齢者医療確保法では、年齢による自己負担割合が言及されていますが、医療価値に応じた負担区分の段階化が可能となるよう、これらの法改正を検討します。
「診療行為のエビデンス、費用対効果や重症度に基づく」医療は現在も、一次・二次・三次救急と、受療先である医療機関の機能により傾斜があり、病床機能によってはDPCが採られており、費用対効果や重症度に基づいた医療は既になされている。一方でマニフェストには細かく書かれていないが「医療価値に応じた負担区分の段階化」においては、経済格差により患者が受けられる医療が制限・選択される可能性があり、医療の平等性に反する。多くの医療専門職の倫理規定に反する視点である。
【福祉政策を読んで思ったこと】
1.テクノロジーにより、支援が必要な人に適切な福祉サービスをブッシュ型で届けます
・現状認識・課題分析
福祉支援の検索・申請手続きの複雑さは、福祉を必要とする人にとって致命的
年齢・障害・病気によって「外に出ることが難しい」「HPやパンフレットを読んでも分からない」「窓口に行ってもたらい回しにされる」「更新手続きの期限に気付かなかった」「手続きが複雑であきらめた」などの声も聞こえます。
・AIと専門家によるハイブリッド型障害福祉相談ポータルを設置します
障害のある方やご家族が抱えるあらゆる疑問や悩みに応える「AI障害福祉相談ポータル」を設置します。このポータルでは、個々の状況や障害特性に応じて利用できる公的制度や必要な手続きを、対話形式でわかりやすく案内します。プッシュ通知機能も組み合わせ、申請や手続きのし忘れを防ぎます。
AIが相談内容から深刻なケースや専門的な支援が必要と判断した場合には、自治体の障害福祉担当職員や相談支援専門員、医療・心理の専門家などへスムーズに接続する仕組みを構築します。自治体と国が連携し、デジタルの即時性と専門家による的確なサポートを両立させ、支援が必要な方に確実にサービスが届く体制を整えます。
「・現状認識・課題分析」は、民生委員のアウトリーチ、介護予防日常生活圏域ニーズ調査等の実施、地域包括支援センターの地域組織化等の取り組み、医療ソーシャルワーカーの存在が完全に無視されており、医療福祉の理解の低さが致命的であり、マニフェスト策定の「現状認識」として成立していない。ここまで理解が低いと冒涜に近い。また、「AI障害福祉相談ポータル」を利用できるのはごく一部の層であり、そもそも「AI障害福祉相談ポータル」が操作できるのであれば、最寄りの相談機関に電話を掛けたほうがよい。そもそも福祉系の相談機関や行政窓口は「たらい回し」にしているのではなく、適切な社会資源を紹介しているのであって、障害や課題が多様な分、相談先も専門分化していることが曲解されている。
2. 切れ目ない福祉支援を提供する、ワンストップデジタル福祉パスポートを実現します
マイナンバーカードと、各種福祉サービスの証書の統合を謳っている。現状、医療保険証(資格証)や介護保険証は原本は本人や家族が保管し、写しを医療機関や福祉施設が保管し、保険者への請求および、入退所・入退院の支援を行っている。仮にワンストップデジタル福祉パスポートが実用化された場合、入退所・入退院のたびに、時に高齢の家族がそれぞれの機関に足を運び原本を提示しなければならなり、不利益を被る。これは当事者でなければ不便さがわからないため、本政党の議員は最寄りの福祉施設の相談員に意見を聴取してもらいたい。
【その他思ったこと】
マニフェストのページに文化という文字がなかった。文化行政はチームみらいにとって見えていないのだろうか。国家(ステート)を技術的に最適化するという意思は強く感じたが、地理的・政治的な範囲を持つ共通の文化や歴史を共有する人々の集団を指す概念である国民・民族(ネイション)の意識が希薄なのだろう。政党にも得意不得意があるが、AIでできる政治であれば、わざわざ人間がやらなくてもいい。そして、AIが多くの知を有しラプラスの悪魔を志向するなか、AIの導入を推進する政党の政治の目が粗いのは自家撞着なのではないだろうか。